自分の苦手意識に向き合う。その素直さが大学院進学を決めた

こんにちは。DHchangeライターのミホです。今回私たちDHchangeは、大学卒業後、大学院で研究を続けているMさんにお話を伺ってきました。多くの友人が臨床に出て歯科衛生士となっていく中で、大学院進学を決めたMさん。自分と自分の将来をしっかり見つめている、その姿勢から学ぶことは多いです。

実はわたしと今回インタビューに答えてくれたMさんは、大学時代の同期。同じ授業・実習を経験してきたからこそわかる、大学院進学の背景や周囲を取り巻く環境、その心境に迫りました。

お名前:Mさん(26)
現在のお仕事:大学院生(博士課程2年目)
職歴:大学卒業後、同学大学院に進学。修士課程を修了したのち博士課程へ進学。現在は大学院で研究を行いながら、保健所や地域の事業にも参加し、歯科衛生士としての臨床経験も積んでいる。
目次

「自信がない」「もっと勉強したい」という気持ちが大学院進学のきっかけ

ミホ:臨床には出ず、大学院に進学しようと決めたのはいつ頃でしたか?

Mさん:私は大学3年生の後半に、卒業後の進路として臨床以外を考え始めましたね。大学院入試の期限が早かったのもありますが、大学4年生の前期には大学院進学を決めていました。

ミホ:大学院に進学しようと思ったきっかけは?

Mさん:大学院を選んだ理由はいくつかあって。

1つ目は、大学にいる間は実習など目の前のことをこなすので精一杯で、将来自分がどのような臨床の場で、どのような職場で働いたらいいのかわからないと思ったことです。

2つ目は、歯科医師・他スタッフと情報共有をしたり、コミュニケーションを取ったりということに苦手意識があったことです。患者さんと話すのは好きでしたが、多忙な臨床の場で素早く判断して動くというのも得意じゃなかったんです

ミホ:なるほど。例えば、ゆったりした雰囲気の歯科医院だったり、患者さん1人につき1時間かけていい・・・というような歯科医院は選択肢としてありましたか?

Mさん:いえ、ありませんでした。外来の雰囲気はゆったりしていても、歯科医師・歯科衛生士など中のスタッフは忙しいんだろうなって。ゆったり働きたくても、急かされたり忙しかったりする可能性を考えて、臨床自体を選びませんでしたね。

ミホ:そうだったんですね。私たちの同期は、そのほとんどが大学卒業後に臨床へ出ていきましたよね。その中で大学院進学という道を選ぶのは、勇気がいりませんでしたか?

Mさん:はじめは修士課程のみで考えていたので、2年間という終わりが見えていてそこまで不安はありませんでした

ミホ:そうだったんですね。修士課程という2年間で終わらず、博士課程まで進んだ理由は?

Mさん修士課程という2年間はあっという間でした。やっと慣れてきた頃にもう卒業で、研究もまだ続けたい気持ちもありました。そこで博士課程に進むことにしましたね。博士課程も修士課程と同じで、4年間という終わりが見えていたので決めることができました

ミホ:大学院以外に検討していた職場はありましたか?

Mさん保健所などの行政機関も検討していました。臨床とは少し違う働き方に憧れもありましたし。しかし求人枠が少なく、就職活動をするという意欲もなかったので大学院進学を選びました。

今アルバイトの一環で保健所の健診に携わっていますが、やはりその仕事の大変さを感じます。それと同時に少し憧れもまだあります。

大学院生であるMさんの1週間のスケジュール

歯科衛生士という資格を持ちながら大学院進学というのは、決して多いパターンではありません。現在も大学院生であるMさんの、1週間のスケジュールを伺いました。

大学院生・Mさんの1週間のスケジュール(例)
 月曜日:研究作業・研究室のミーティング
 火曜日:病棟での口腔ケア
 水曜日:訪問歯科あるいは研究日
 木曜日:研究日・研究室のミーティング
 金曜日:病棟での口腔ケア
空いた時間に研究補助や保健指導(研究の一環)、開業医でのアルバイトなどを行っている。

大学院で研究を行いながら歯科衛生士としても働き、多くのことをこなしているMさん。大学院生として過ごす中で感じるやりがいや、大変なことなどを伺いました。

ミホ:大学院生としての研究や仕事をする中で、どんな時に喜び・やりがいを感じますか?

Mさん:喜びややりがいを感じられるのは、研究室で取り組む研究や、その学会発表が終わって一段落ついた時ですね

それから、研究を行う中で対象になってくださった患者さんから感謝されたり、ねぎらいの言葉を頂いたときにも頑張ってて良かったな、と思います

ミホ:なるほど。私も学会発表の経験があるのですが、そのための準備ってとてつもなく大変ですよね。学会発表はどれくらいの頻度でされているんですか?

Mさん年に3〜4回ほどです。自分1人で発表をするのではなく、多くの先生方のご指導を頂きながらの発表になります。

ミホ:逆に大学院生として過ごす中で、大変だったり困ったりすることはありますか?

Mさん:あります。相談する相手があまりいない」ということです。大学院には年の近い先輩・後輩はいるものの、同じような境遇で働いている同級生がいないので、共感し合ったり発散し合ったりできないのが時々つらいですね。

臨床に出ているみんなの大変さに比べたら・・・と思ってなかなか話せなかったり。

ミホ:そうだったんですね。大学院生として過ごす中で、身についたスキルはありますか?

Mさん:やはり研究では統計・分析をよく行うので、パソコン操作統計ソフトを使えるようになりました。

あとは臨床以外では必要ないと思っていたコミュニケーションスキルも、研究や発表を通して身についていました(笑)

臨床では学べない、大学院で学べる多くのこと

ミホ:大学院進学という道を選んで良かったと思うことはありますか?

Mさん:たくさんあります。大学院にいることで、いろんな職場に行けていろんな経験を積むことができます。言うならばちょっとした「キッザニア」です。

私は高齢者歯科という分野で研究をしていますが、いま日本は高齢社会なので、社会のニーズにも合っているなと思います

ミホ:そうなんですね。たしかにそのような経験は、臨床に出るだけではなかなかできませんよね。Mさんにとって、大学院とはどのような場所ですか?

Mさん:大学院の先生・先輩方は、私を一から育ててくれました。今までお世話になった人たちや、教えてくださった先生方への感謝の気持ちで今が成り立っています。大学院は、本当にさまざまなことが学べる場所です。

ミホ:大学院で学ぶ中で、Mさんが大切にしていることがあれば教えてください。

Mさんどんなことでも、やらせていただいているという気持ちを忘れずに」。先生方もそうですが、研究の対象になってくださった方など、多くの方のおかげで今の自分があるという気持ちを忘れないようにしています。

大学院進学を通して気づいた「自分らしく働く」ということ

私たちは、歯科衛生士の受験資格だけでなく、選択すれば社会福祉士の受験資格も得られる大学でした。社会福祉士の受験資格を得るためには、多忙な授業・実習スケジュールをこなさねばなりませんでした。今回インタビューに答えてくれたMさんは、それを乗り越え、歯科衛生士と社会福祉士というWライセンスを持っています。

ミホ:大学院を卒業した後の予定はありますか?社会福祉士という資格を活かす予定はありますか?

Mさん保健所だったり、訪問歯科だったりすると社会福祉士という資格を活かせるみたいですが・・・。とりあえずは、臨床の現場で歯科衛生士として働いてみようかなと思っています。アルバイトとして臨床には出ていますが、常勤としては働いたことがないので。

あとは、自分らしくゆったりと、海外で生活してみたいな〜とも思います。

ミホ:ありがとうございます。では、歯科衛生士からの転職を考えている方、特に大学院進学を考えている方に一言お願いします!

Mさん大学院では学べることがたくさんあります!臨床では費用のかかるセミナーも、大学院生であることで助手として参加できるなど・・・やはり勉強できる機会が多いです。

歯科衛生士として臨床を経験してから大学院に入学する方もいますし、大学院を卒業後臨床に出て、また大学院に戻ってくる方もいます。臨床に出てからでも、もっと勉強したいという方は大学院進学を考えてみても良いと思います!

歯科衛生士という資格を持ちながら、さらなる勉強のために大学院進学という道を選んだMさん。Mさんのお話を伺って感じたのは、「自分の気持ちに素直になること」の大切さです。歯科衛生士という資格を取ったら、そのまま何となく臨床に出たという方は多いのではないでしょうか?

そんな中、自分の気持ちを見つめ直し、自分が本当にやりたいことを追求しているMさんから学ぶことは多いです。しかも、それを大学生の頃に決意し行動に移せているからさすがです・・・。

臨床で働く「歯科衛生士」という仕事は引く手数多で、就職先に困ることはほとんどないでしょう。そんな状況でわざわざ別の道を選ぶのはとても勇気のいること。それはみんな同じです。しかしその一歩を踏み出せれば、その先には広い世界が広がっています。Mさん、本日は本当にありがとうございました!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

目次
閉じる